科学の世界の悪魔
科学の分野でも悪魔の存在を仮定する例がある。「マクスウェルの悪魔」「ラプラスの悪魔」が有名どころで、いずれもパラドックスに絡んでいる。人間には絶対に不可能と思われるものの、その定義される能力が何となく具体的なので、悪魔になら出来るかもしれない、といったところであろう。
科学そのものも悪魔とは結構親和性がある。科学は積み重ねによって当たり前には人間の手の届かないところまで手を届かせてしまい、あり得そうにない現象をも扱ってしまう。しかもそこに絶対的な善悪を論じない、あるいはその判断が科学そのものからは生まれないから、神よりは悪魔の方が近しい。ゲーテの『ファウスト』で描かれるところのメフィストフェレスは「理性は持っているが悟性は持たない」ことになっており、これはある意味で科学そのものの姿でもある。
その結果、非人道的な発明や実験を制止する論理を科学そのものは持たない。そのため、毒ガスとか核兵器など大量殺戮兵器のようなものに関わる学者も実在し、彼らは往々にして「悪魔の科学者」といわれる。たとえばフォン・ブラウンは月ロケットを作る役に立つならV2号ミサイルを製造するのに協力を惜しまなかった。彼が第二次大戦を生き延びられなかったら、彼にもその名が与えられたであろう。創作の中でのマッドサイエンティストはその極端な例である。